眼形成外科

リーダー:鹿嶋友敬

眼の機能美と形態美の両立

専門の眼科医による眼の表面の観察や眼球運動の詳細な評価により、人の印象 を大きく左右する顔の形を良くするだけでなく、眼球機能の向上との両立を目指します。

眼形成とは…

まぶた(眼瞼)や、眼の周囲の組織(眼窩)について、専門的な知識を元に手術を行う眼科の分野のことです。

日本では、この分野の手術は主に形成外科や耳鼻科の医師が行っています。しかし眼瞼は角膜や結膜などの眼表面と、眼窩は眼球運動とそれぞれ密接に関わっており、その詳細な評価は眼科医にしか出来ません。

当科の眼形成外来においては、眼科医が専門的な知識を持って眼瞼や眼窩を診断し、"視機能"や"生活の質"の向上と、"形態美"の両立を図ります。

眼形成外来で治す疾患

眼瞼の疾患 眼瞼下垂、眼瞼皮膚弛緩症、眼瞼・睫毛内反症、眼瞼外反症、甲状腺眼症、顔面神経麻痺、兎眼症、眼瞼腫瘍 など
眼窩の疾患 眼窩骨折、甲状腺眼症、眼窩腫瘍 など
その他の疾患 義眼、結膜弛緩症、涙道閉塞症 など

各疾患・治療について

眼瞼の疾患

眼瞼は主に上眼瞼挙筋のはたらきによる開瞼機能と、眼輪筋の収縮による閉瞼機能のバランスの上に成り立っています。正常な眼瞼は、上眼瞼は瞳孔から角膜輪部までの間、下眼瞼は角膜輪部に位置します。また、眼瞼は角膜や結膜といった眼表面の組織と密接に関わるため、眼瞼の病態の把握にはこれら眼表面の状態の評価が必須であると考えます。当科では各疾患に対して、解剖学的知識・眼科的評価を元により良い機能回復を目指しています。

瞼下垂(加齢性)
年齢に伴ってまぶたが下がるため、見づらさを感じる病気です。まぶたを動かす腱が年齢により緩むのが原因とされます。これを修正しようと眉毛の挙上を伴うことがあります。眉毛の挙上と眼瞼の下垂により眼瞼皮膚が伸び、重瞼が消失するなど、健常側との差異が目立つ場合があります。また、腱の伸長とともに眼窩脂肪も引き込まれ、眼瞼の陥凹が顕著です。手術では腱の短縮を行い、開閉瞼機能の回復と形態の改善の両立を目指します。眼瞼の陥凹や、眉毛の挙上が軽快します。
眼瞼下垂(先天性)
先天性にまぶたを上げる筋肉の発育が悪いため、まぶたが下がっています。これを修正しようと眉毛の挙上を伴うことがあります。修正する手術にはまぶたを挙上する腱を短縮する挙筋短縮術、眉毛と眼瞼を連結し眉毛挙上で開瞼が出来るようにす吊り上げ術があります。挙筋短縮術では短縮量に比べ、挙上量が不十分になることが多いため、当科では吊り上げ術を行っています。吊り上げ術の材料としては大腿筋膜・人工硬膜・ナイロン糸を使用しますが、それぞれメリットとデメリットがあります。当科では大まかに学童以下の年齢にはナイロン糸、それより上の年齢層には人工硬膜を使用しています。大腿筋膜はデメリットが大きいと考え、当科では行っていません。
眼瞼皮膚弛緩症
上眼瞼の皮膚が余っているため、視野を障害したり、睫毛を押し下げるため睫毛が角膜に接し異物感をきたしたりする場合があります。余った皮膚を減量し、二重を作成することで睫毛を外反させます。二重のラインが変わるため術後容姿が変化します。
顔面神経麻痺
外傷や腫瘍、ストレスなどにより顔面の動きを支配する顔面神経が麻痺する疾患です。眼輪筋の麻痺により閉瞼不全をきたしますが、動眼神経に支配される開瞼機能は正常であるため、兎眼により角膜混濁をきたすことが非常に多い疾患です。従来から点眼や軟膏で治療されていますが、慢性的な角膜炎により角膜混濁をきたし失明する場合も多いです。当科では下眼瞼へ外反の修正、上眼瞼へGold Plateの移植、眉毛上皮膚切除の3点の手術を行うことで、正常に近い機能と容貌を目指します。
睫毛内反症・睫毛乱生症(加齢性)
長期間の点眼などによる刺激や、スティーブンスジョンソン症候群、加齢による眼瞼の変性などにより、睫毛が内反し眼表面をキズつける状態です。重症の場合、毎週のように睫毛抜去が必要になります。これには手術で睫毛根除去や、Lid margin split法+Hotz変法を行い治療します。
眼瞼内反症(加齢性)
加齢により眼瞼の支持組織がゆるみ、眼瞼自体が内反してしまう状態です。睫毛がすべて眼球にあたるため、睫毛抜去では根本的な解決にはなりません。当科では下眼瞼牽引腱膜の短縮(Jones変法=Kakizaki法)や水平方向の短縮術を行っています。

眼窩の疾患

眼の奥の組織には、眼の動きを支配する神経や筋肉、それらを栄養する血管、その周囲の脂肪組織などがあります。さらに眼の周囲の皮膚を支配する血管や神経も眼窩を通ります。また眼窩周囲の骨は立体的に複雑な形状となっているため、経験や知識を必要とします。このため眼窩の手術には解剖学的知識が必須です。当科では専門的な知識と経験をもとにこれらの治療を行います。

眼窩骨折
眼の周囲の骨が折れ、眼の奥の筋肉や脂肪が脱出するため、物が二重に見えたり(複視)、眼が凹んでしまったり(眼球陥凹)する病気です。眼窩の骨のアライメントは多少のずれでも複視や眼球陥凹を残すため、可能な限り正常に近い位置に戻すことを目指します。また、他院手術後の後遺障害に対しても手術を行う場合があります。若い年齢の場合、組織の絞扼を伴う場合があり、その場合は早期に手術を行うことがあります。
甲状腺眼症(バセドウ病眼症)
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)と関連して、眼の奥の筋肉や脂肪が増大する病気です。それらの組織の増大により、眼球突出や眼球運動障害をきた します。また、眼球突出と関連して睫毛内反をきたすことがあります。また眼が閉じられなくなる場合があります。これらの病態により顔貌が大きく変わってしまうと、精神的な負担となることがあります。これら甲状腺眼症の病勢は甲状腺機能亢進症の病勢とはリンクしません。当科では個々の状態に応じて、眼窩減圧術を行っています。主に眼窩周囲の骨の減量と眼窩脂肪の減量を行い、機能面・整容面での改善を目指しています。
眼窩腫瘍
眼の奥に出来る腫瘍には様々なものがあります。それぞれの特性に合わせた治療を目指します。

その他の疾患

最近の研究で、眼のゴロゴロ感や涙目に結膜弛緩症が関わっていることが明らかになってきました。単純な結膜弛緩症はバイポーラを使用した凝固術で5%の症例に改善が得られます。また、涙丘部の突出を伴った結膜弛緩症は涙丘の切除を含めた眼表面の再建を行います。